明後日で1歳9ヶ月となる息子が、このところ「とうさん、かあさん」と言えるようになった。もちろんその発音はまだ「とーしゃん」であり「かーしゃん」だ。すなおに嬉しい。1歳9ヶ月の言語能力がどの程度なものなのかは知らないし、よしんば「それ、ちょっと遅いですよ」といわれたとしても悲しいことなど無いし、「それは早いですよ」といわれたとしてもそれで嬉しさが増すことは無い。子供の成長の速度が嬉しいなどということではまったくなくて、息子と自分の関係性が確立しつつあるということがとても嬉しいということ。

　まあそれはともかく。

　息子の好物のひとつにミレービスケットというのがある。とにかく好きで好きで、これを食べている時に横から「1枚ちょうだい」と言っても絶対にくれない。他のものはくれるのだ。自分が食べているものを親にも食べさせたいという気持ちがあるのか、時々くれる。ややもするとありがた迷惑な場面もあるが、この子は優しい子だなあと親バカスイッチが入ったりする。だが、このミレービスケットの時はくれない。わざと「1枚ちょうだい」とねだっても首を激しく横に振る。

　この首を横に振るのが否定だとか拒絶の意味だというのは、特に教えたことも無いのだけれど、息子は嫌な時は首を横に振るし、嬉しかったり肯定する時には首を縦に振る。これは一体なんなんだろうか。本能に組み込まれていることなんだろうか。いやもちろんそういうのはちょっとググればわかることなんだろうけれど、そういう知識の問題ではなく、育児をしている日常の一コマで、その事実に驚かされたり笑わされたりするわけで、そういう感動をいちいち楽しみたいということが大切。子供がお父さんお母さんと喋るようになるというのはとても当たり前のことだし、「人間には言語中枢というものがあって…」と解説すれば一件落着するのかもしれないけれど、別に一件落着したいのではなくて、そんな当たり前のことにいちいち驚きたいわけで。だから、ググりもしないし、当たり前のことを当たり前で済ませたくないと思っている。恋愛などもほ乳類の本能のひとつといえばその通りなんだろうが、でもこの人が自分のことを好きでいてくれるということが大いなる感動なのであり、それは自分の息子が他の家でなく自分たちのところに生まれてきてくれて、そして1年9ヶ月足らずでお父さんお母さんと自分たちのことを呼んでくれている。そのことが、大いなる感動であり、たぶんググっても答は出てこない、んだと思うのだ。

　まあ本能でもなんでもいいです。息子が首を縦に振れば嬉しく、横に振ればそれもまた嬉しく、自分は親バカなのだと自覚し、それもまた嬉しく。そんな日々です。