facebookで数日前に生まれたての赤ちゃんの写真をアップしていたニューヨーク在住のフレンド（面識は無いけど）が新たな写真をアップしていた。それは彼が赤ちゃんを抱いている写真だった。最初にアップしていたのは保育器に入れられているのか、いくつもの管が口や鼻につながれていた写真で、それが今日のはまったくなく、お父さんに抱っこされている。ああ、良かった良かった。と思ったのもつかの間。英語の文面を読むと「息子を抱いている写真。残念なことに母親がこの子を抱いている写真が1枚も無い。知ってる人もいると思うけど、出産後の手術の後に彼女は亡くなってしまった」と。

　悲しいことだ。お母さんに会えない子どもも悲しいし、子どもを抱けなかったお母さんも悲しいし、奥さんと死別した旦那さんも悲しいし、もう何が悲しいのかもよくわからないくらいの悲しみに襲われた。現代で、しかもニューヨークのような場所で、出産時に母親が亡くなるなんてことがあるのかと、本当に驚く。

　もしも仮に、一瞬だけでも子どもを母親が抱けていて、その写真を撮影することができていたのなら、フレンドの悲しみは癒されたのだろうか。それもよくわからない。却って辛さが増したのではないだろうか。悲しみはいろいろな形で訪れる個人的な感情で、一般論で測れるものではない。僕も20年前に父が他界したときの感情は自分でも予想外のものだったし。まあ僕のことはともかく、母親を失った父子は、悲しみにふけっている余裕も無く、明日から、いやもう既にだろうが、1日6〜8回程度のミルクと、オムツ交換と入浴と、場合によっては夜泣きとが待っている。お父さんだから当然仕事もしなきゃいかんだろう。おばあさんたちが助けてもくれるだろうが、なんといってもお母さんの不在は大きい。てんてこ舞いの日々だろうと思う。だから悲しみなど感じる余裕も無い中で、写真の存在がふとしたエアポケットのような瞬間に、何らかの癒しになるのかもしれない。判らないけど。

　そういえば先日死んでしまった義父宅の犬。報を受けて翌日三重県まで行ったのだが、義妹は既にいて、泣きながら翌日の埋葬の準備をしていた。その義妹から先日「●●ちゃんの写真を欲しい。持っているものがあったら全部ください」と言われた。その時は、そんな昔の写真を発掘するのなんて難しいよ〜と思ったのだが、今回出産後の奥さんを亡くした人の投稿を見て、ちょっと間違ってたかなと思い直した。すぐに全部と言われても困るわけだが、折りをみてちょっとずつでも探してみよう。過去の写真に囲まれて悲しみに浸るのはどうかとは今でも思うが、手元に持っていることで安心するということもある。無いが故に過剰に思ってしまう的な、そういう気持ちくらいは和らげることも出来るのかもしれないし。