帰宅すると息子がハンドタオルを持ってやってくる。はいこれお父さんの。手を洗えというのか。いや、違う。ズボンの後ろにはめろという。しっぽを付けろということなのだ。

　逆らっても仕方ないのでおとなしくタオルのしっぽを付ける。息子のお尻にはもう既にしっぽがついている。嬉しそうな顔をして「メエ〜！メエ〜！」と叫んでいる。そうか、今日は息子がひつじでお父さんがイヌなんだね。

　やっているのはひつじのショーンごっこだ。息子が「メエ〜！メエ〜！」と、僕が「ウワンッ！ワンッ！」と。鳴き声どうしなので何を言っているのかはわからない。じゃあ日本語同士でやれば何を言ってるのかわかるのか？　わかったところで意味ある会話は成立するのか？　そもそもしっぽを付けたひつじとイヌの間で。

　まあよくわからないのだけれども、息子がひつじのマネをして嬉しそうな様子を見るのはお父さんも嬉しい。だからしばらく付き合ってごっこあそびに興じる。そのうちにお母さんからごはんですよと言われて、ごっこあそびは終了してしまうのだから。

　人生のごっこあそびは、死ぬより前にどこかで終わりがくるのだろうかと、興じながら考えたりしている。