人には習慣がある。習慣としてやっていることなら何の苦もなく日々続けられるが、習慣にないことを新たにやろうとすると、それはかなりの苦痛を伴う。

生活習慣病を指摘されると、ほとんどのケースで痩せなさいと指示を受ける。だがそれまでの長い年月の暮らしで体型を形成してきたのだから、暮らしそのものを変えなければ痩せるなど不可能だ。痩せるためには摂取を控えて消費を増やす。単純な算数問題だが、摂取を控えるとは食わないことだし、消費を増やすとは運動しろということ。それまでの暮らしにない行動はなかなか困難だ。しかもただ闇雲にダイエットするのではリバウンドやその他の弊害を引き起こす恐れがあるし、運動も無酸素運動では効果がない。正しいダイエット法を理解した上で生活を変えていくのは、やはり難しいことだと言わざるをえない。

人生の曲がり角に差し掛かった時、それまでの自分の生き方に戸惑うことがある。その人に読書が足りていないとか、音楽が足りてないなどと感じた場合、周囲は本を読めとか、音楽を聴けとか言いたがる。だが、飽食の暮らしの人に粗食を勧めることや、運動不足の人にウォーキングを促すことが実際にはかなりの困難を強いることなのだとすれば、読書習慣のない人に本を読めと言うこともまた、困難を強いることなのかもしれない。

じゃあ音楽なら聴くだけだから楽じゃんねとも思うが、ではロックやポップスばかり聴いている人にいきなりオペラCDがイイぞオペラ聴けと言ったところで、そのオペラ漬けの日々が果たして苦痛にならないのかと考えてみれば自明のように、音楽に愉しみを感じられないのであれば、やはりそれは困難な業でしかないのだろう。

だが、音楽も読書も強くしなやかに生きていくためには欠かせない要素の一部であり、ある意味心の免疫機能を形づくるものであるから、それを生活習慣として持つことはとても大切なことである。とすれば、子供にそれを持たせるのは親の重要な役割であり、使命であると僕は考える。その方法は如何にすべきなのかはよくわからないものの、基本的には親が本を読んでいる姿を日常的に見せるのが大切だろうし、一緒に音楽を聴く機会を作るのが大切なのだろう。

それは、簡単なようで簡単ではないし、困難なようで案外困難ではないのかもしれない。よくわからないけども。