リケジョのあの人へのバッシングがすごい。

　どういう背景なのかがまったくわからないからなんともいえないというのが正直なところだが、件の論文がどのくらい問題なのかについては、素人なのでまったくわからない。それは世紀の発見と報じられた時にも逆の意味で、つまりどのくらい凄いのかが素人なのでまったくわからなかったというのと同程度に。

　しかしまあ、要するに報道が賞賛すれば「すごいな」と思い込み、報道が叩けば「ああ、ウソだったんだ」と思い込む。で、どちらも思い込みに過ぎないと、僕は考えている。

　勝手な妄想で言わせてもらうと、世紀の発見には利権が伴う。論文の整合性がどうかということはともかく、世界中の生物学か医学かしらないけれど関係する研究者たちは可能性に気がついたんだと思う。ここで何らかの形で叩いて論文が撤回でもされれば、その可能性について世界中が競って研究をする。理化学研究所がシュンとしている間に完璧な実験と完璧な論文が出来れば世界が注目する。そして栄誉とともに特許も転がり込んでくる。それは要するに富だ。金だ。ゴールと方向性が見えていれば、着想ではなく研究であって、資金を持っているところが先にゴールするだろう。だったら、叩けよ。何でもかんでも使えるものは使ってでも。

　最初に世界中の研究者が「再現出来ない」と騒いだところがすでに胡散臭い。成功したというのにはそれ相応の努力が必要だが、失敗したというだけなら誰だって出来る。僕だって「再現に失敗した」と言える。やればきっと成功しないよ、素人だもの。それでも失敗したことに変わりない。つまり、再現出来ないっていうのは研究者としての能力の無さを自らさらけ出すようなものであって、だから、普通は堂々と言ったりしない。それを世界中の研究者が口にして、我れ先に自らの無能ぶりを喧伝するのだ。どこかおかしい。

　いや、僕は何もリケジョの肩を持つつもりは無い。論文を撤回しないと突っ張っても、撤回するとしても、まあそれはそれ。

　ただ、日本はなんでこうまでも自らの可能性を潰すのかなあとすごく思う。リケジョさんのことを可能性と言っているのではない。もちろんそれも可能性のひとつだし、ある程度の才能は持っているひとなんだろうと思うが、それ以上に、その発表を見て後進が育つ、その可能性があったのだ。

　スポーツなどでもそうだ。長野でカーリングが盛上がれば後進も育つ。伊藤みどりがトリプルアクセルを飛んでみせたから浅田真央もフィギュアを志した。ノルディック複合で荻原健司が金を取りまくれば後進も育った。そういうトップが引退することで、話題も減り、後進が入ってきにくくなる。

　今回のこの一連の叩き報道で、研究者の後進は萎むだろうと思う。当然だ。日本ではちょっと目立つと叩かれるらしいよと。それで革命的な研究など進むはずもない。

　例えばホリエモンが逮捕され服役した。彼自身がどうだったのかということについては毀誉褒貶もあるだろうし意見が分かれるところだと思うが、少なくとも、彼の登場で一次盛上がったITベンチャーブームは一気に萎んだ。ベンチャーの大半は失敗するものの、たくさん出てくれば中には光るものも出てくる可能性は増えるし、なによりそういったベンチャーが増えることでファンドも活性化していく。だがホリエモンの逮捕でベンチャーにチャレンジする若者が一気に減った。これも、過剰に叩いたことの弊害である。

　日本人は特に嫉妬深いんだろうなあと思う。だから他人の成功から転落というストーリーにすぐに食いつく。同業者は嫉妬して、一般人はただ面白がる。数字を取れるとメディアは過熱報道をする。だがそれは才能潰し以外のなにものでもないし、才能が育たなければ資源のない国日本の未来は甚だ暗いものになるということは、知っておいた方がいいように思う。