エンブレムの件、尻尾きりだと思います。デザイナーに責任を負わせ、切る。これは競技場の件でもそう感じます。デザイナーの案を切る。でも建設をするゼネコンも運営委員の誰も、責任は取らない。

　原発事故が起きても、住民は被害を受けるが、原状回復も叶わず、電力会社も政府も責任は取らない。再稼働をするけれど、事故が起きた時の責任の所在はハッキリせず、避難計画もきちんと作られず。

　日本は素晴らしいというテレビ番組がとても多いそうですが、そういうところ、トップが誰も責任を取ろうとしないところ、全然素晴らしくないと思います。

　30日のデモは、尻尾を切って逃げようとしている人へ、尻尾として切られるのではないかと感じている多くの人の、心の現れだと思います。自分は尻尾になると感じている人が、増えていることの可視化だったと、思います。

　佐野さんというデザイナーは、自分は選ばれた存在だとこれまで思っていたのではないでしょうか。選考の過程が明らかになるにつれ、インナーサークルの中だけで回されていたことが白日に晒され、そのサークルの中にいたはずの佐野さんが切られた。このことが、興味深いとともに哀れでなりません。

　今後起こり得る日本のさまざまな瓦解の中で、塔から堕ちないで済むようにと必死になる人たちが増えるでしょうが、その塔そのものが瓦解してしまえば、堕ちないで済むなんてことは夢のまた夢だったりするわけです。

　まあ、堕ちるどころか最初から登っていない人にとっては、テレビの画面に映される雪崩を見るようなものでしかなく、つまらなかったらスイッチを消せばいいだけの遠い世界の悲壮感でしかないのかもしれませんが。