先月出来たロームシアターに、蔦屋書店が併設されたので行ってみた。印象としては、代官山にある蔦屋書店というよりも六本木の青山ブックセンターのような気がした。あや、大分違うんだけども。このところ京都の書店というと丸善のオープンから誠光堂のオープンといったある意味極端なお店のオープンが話題だったので、この蔦屋書店は比較的ノーマルじゃんという気さえする。だがやはり特殊な店であることは間違いなく、大垣書店やフタバとは趣を異にする。

個人的に注目したのは、手芸コーナーの一角にあった翻訳文学の並び。なかなかなセレクトであった。ただたくさん本を置いておけばいいというのでは、読み手も触手が動かない。その点ここの翻訳文学コーナーはイカしてた。あと、店の奥にあるスタッフルームのドア前に7冊ほどの本が置いてあったのだが、ここも良かった。岡潔の本と、円周率をただひたすらに記述した小冊子はグッときた。

店を入ったところに美術書が置いてあって、そこがぱっと見的にはこの書店を特徴づけるのだが、そこである若者が「東京に行かなくてもこういう本が買えるようになってきたんだよなあ」としみじみ言ってた。興味深かった。

もちろんamazonでなんでも買えるのである。東京に行かなくても買えるのは当たり前。だが、amazonでは基本的に知ってる本しか買えない。本屋にはひとつの傾向というものがあり、そこに並んでいることで吸い寄せられる磁場のようなものがあり、その磁場こそが書店の存在理由だし価値なんだと思う。

東京を離れて京都に暮らしている僕としては、東京に行かなきゃならない理由はもはや無いと思っている。でも、その若者は続けて言っていた。「といいながら、オレ来月から東京行っちゃうんだけどね」と。面白いなあ。それでもまだ東京にみんな行くのだ。本は京都でもあらかた買えるけど、それでも他の街には無い磁場はあそこにはあるのだろうな。