数日前から東京の都心部上空を飛行機が飛び始めたらしい。横田基地との兼ね合いで民間機は東京上空を飛ぶことが出来なかった。そのため西からやってきた飛行機は東京湾を旋回して千葉上空から羽田に降りてくる。初めて羽田に飛行機で着いたとき、窓から外を眺めてて「これは海に落ちる！」とハラハラしたものだ。当然ながら乗った飛行機が海に落ちたことは1度もない。その東京上空を民間機にも飛ばせるようにするらしい。それで都心から飛行機を写した写真をアップして、「近い」もしもアレが落ちたら大惨事になる」という投稿が沢山流れてきた。幸か不幸か、大阪上空も福岡上空も飛行機は毎日飛ぶが、そういう事故は起きていない。だが、沖縄では落下事故は何度か起きている。民間機ではない、米軍機が。夜中も飛ぶらしい。そのことが報道されても他人事として過ごしてきた大多数の東京人が、昼間の港区上空を民間機が飛ぶことに驚き、その音を嫌悪し、もし落ちたらどうすると不安を漏らす。まだ落ちたことないのに。他の場所で落ちたことにはほとんど関心を持たなかったのに。

新型コロナウイルスが流行している。これをパンデミックと呼ぶべきか呼ばざるべきかは素人の僕にはよくわからないけれど、テレビに出てくる専門家によればまだパンデミックではないらしい。その専門家の説をどのくらい僕らは信用すればいいのか。完全に信用するという人、まったく信用しないという人。様々だし、様々で良いと思う。同じニュース番組で昨日までアメリカ大統領の民主党予備選挙でバイデンが最有力と言ってた専門家が、蓋を開けたらバイデンがまさかの最下位で、舌を噛みそうな38歳若手候補が選ばれた理由をもっともらしく解説している。専門家って一体なんだろうか。実際には見たことないけれど、競馬場には予想屋という職業の人がレースに勝つ馬を予想してくれるという。そんなに根拠のある予想ができるのであれば、競馬場の外までやってきて予想を繰り返す必要なんて無いだろうに。そのことを冷静に考えれば予想屋に金払うことの愚かさはわかるだろうに、そこそこの人数がその予想を買っていくらしい。まあ、予想をして掛けをするより、予想を売って小銭を稼ぐ方が確実に生活につながるのだろう。いや、もしかしたら予想屋は想像以上に儲かる職業なのかもしれないけれど。

で、様々な人たちが予想屋のようなことをやってテレビに登場。ああ、これは9年ほど前に見た光景だな、既視感あるなと思った。原発事故の後に次から次に出てきた専門家。みんな揃って「大丈夫。健康に（ただちに）影響はない」と言ってた。良いのだ。良いのだ。そういうことを言うことも別にいいのだ。だがその専門家たちの予想をもとに世論が形成され、専門家の意見に反して放射能の影響を恐れる人のことを放射脳と揶揄する傾向が醸成された。今回のコロナウイルスについても、そのような一方的な説の圧力が生まれなければいいのになと思う。怖がらない人は怖がらず、怖がる人は怖がる。これでいいんじゃないだろうか。ただ、今回はウイルスだし、放射能とは違う。その影響で死んだと判定される被害者が確実に生まれる。実際に世界には新型コロナウイルスに感染して重篤化して亡くなった人も少なからずいるし。放射能の影響が健康に直接的に出てくるのは数年数十年後で、その場合に因果関係を特定することは難しい。だから「大丈夫」といった責任をとる必要はほとんど無かったけれど、新型コロナウイルスについてはあまりに「大丈夫」と言うと、責任問題に発展する可能性だってあるよな。

個人的には、インフルエンザの方が怖いと思う。先日息子がインフルにかかり、その2日後に熱が出て医者に行くと「まあ状況からするとインフルでしょう。わからないけれどインフルという前提で考えた方がいいし、検査しますか？」と聞かれた。検査をすればお金かかるし、しなければお金はかからないと。検査をしてインフルだった場合、タミフルを飲むのと飲まないのでは熱が下がるまでにかかる日数が1日〜2日違ってくるだけということだった。もちろん検査をしないでタミフルを処方するわけには行かないので、要するに「1.検査（インフル確定）＋タミフル」の金額か「2.検査（インフル確定）」の金額か「3.検査（インフル陰性）」の金額か「4.何も無し」の金額かの4択。それでインフルだった場合に1〜2日治りが早いだけと言われて、検査無しを選んだ。医者は頓服を処方してくれた。

新型コロナウイルスのニュースばかりやってるので、ドラッグストアからマスクが品薄で消えたとのこと。マスクをしててもうつる時はうつるらしい。自分が保菌者の場合に撒き散らしにくいというだけで、予防的な効果は薄いとか（素人の言ってることなので、全面的に信用したりしないよーに）。だけれどもマスクが無くなるとみんな余計に騒ぎだして、ますます品薄に。新型コロナのことはともかく、今年は暖冬で花粉がもう飛び始めているらしくて、その点ではマスク無しはかなり辛い。だからといってマスクが欲しい人に「焦るな、買うな」というのは放射能汚染を恐れた人に「放射脳」と言うのと同じことなので、まあマスクが品薄ならくしゃみをして過ごすかなとしか思わない。人はそれぞれの理由と欲求によって物を買う自由がある。にわかファンがコンサートやスポーツイベントの良い席のチケットを買って、長年のファンが買えなかったとしても、長年のファンがにわかファンを詰るべきではない。マスクが本当に必要だという人があらかじめいろいろなケースを想定して買い置きをしておけば良かったので、ストックがほとんど無い僕など、本当にマスクが必要な人ではなかったと割り切るしか無いよ。

それはそれとして、新型コロナウイルスの件で、中国が団体旅行を禁止したらしく、京都の観光地がガラガラだというニュースが流れている。facebookの京都好きの人たちのグループがあって、そこでもそのニュースを取り上げてて。コメントで「これぞ本来の京都のあるべき姿！」「中国人はもう来なくて良いんだ」みたいなのが並んでてがっかりする。昔バブルの頃に猫も杓子も海外旅行に行って、どこにでもいるジャパニーズと揶揄されていたことを忘れたか。今中国人観光客を叩くのは、30年以上前に日本人を一部の外国人が叩いていたことを肯定することに他ならない。やっちゃいかんことだし、恥ずかしい。そもそもその京都好きグループに参加している人のほとんどは京都じゃない場所に住んでいる人だ。その人が京都が好きで京都に観光に来ることと、外国の人が京都が好きでわざわざやって来ることと、どこが違うのだ。外国人が京都観光に訪れることを「もう来なくて良い」という人が来なければいい。誰かが誰かに「○○に来なくていい」ということが正当な要求になってしまうのなら、そう言っている人に対しても「来なくていい」と言うことも正当な要求ということになるだろう。そもそも、来なければ混雑している京都に辟易する必要が無くなるのだし。どうだろうか。

日本には天然資源が無い。かつて輸出の主力だった家電産業は失われた。自動車産業も電気自動車の時代を迎えればどうなるかわからない。そうなってくると観光資源に頼るほかなくなってくるだろう。本来ならば新しい産業で各国と伍していくための優秀な人材を国家をあげて育成するべきだし、それによって育った優秀な人たちが日本の産業を良くしていくべきなのに、そうはなっていないし、今からやったって30年単位でしか結果は出ない。それなのに隣国とは国家レベルで諍い、国民レベルでは静かな日本がいいとか言ってる。まあ観光地がガラガラなのがいいという人は、都会で静かに暮らしたいから保育園など作るのは反対と言ってる人と同じなのかもしれないし、そういうのが国をジワジワと殺すんだろうと思ったりするし、もしかしたら、マスクマスクと騒いでいるのかもしれないとか、ちょっと思ったりしている。